「おしてあげようか」と「何かお手伝いしましょうか」

 「おしてあげようか」と後ろから子どもの声がしたんだ。ごりは、ちょうど坂を上ってトレーニングをしているところだったから、「ありがとう。トレーニングしているところだから、大丈夫だよ。また、今度ね」と丁重にお断りしたよ。声をかけた子どもは、きっと家庭か学校で、「困っている人にはやさしくしましょう」というようなことを教えられてたんじゃないかな。とてもいいことだよね。

そこで、ごりはこういう時は、手伝ってもらったほうが良かったんじゃないかと思ったんだ。もし、押してもらってたら、その子は、家に帰って、「きょう、ぼく、くるまいすをおしてあげたよ」なんて言って、家族と話をしたかもしれないじゃない。そして、「それはえらいね」と親にほめられたりしてさ、また親や兄弟もその影響を受けるかもしれないよね。ごりは、小さな子どもの親切を無駄にしてしまったんじゃないかって、迷ってしまったよ。

「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてくれたのは、フードコートの若いウェイトレスだったんだ。ごりは、ちょうど壁のメニューを見ながら、何を食べようかと迷っている時で、「ありがとう。大丈夫ですから」とこたえたよ。その女性の応対は、やさしく思いやりのある行為だったね。混み合っている店内で、忙しいはずなのに心配りをしてくれたんだもの。

「おしてあげようか」、「何かお手伝いしましょうか」、どっちの言葉も心にしみいるやさしい言葉だったよ。そして、もし、ごりが本当に困っているときだったら、ごりにとっては非常に助かる行為であったに違いないんだ。声をかけてくれた子どももウェイトレスも、これからも懲りずに声をかけて欲しいよ。必ずね。

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